佐藤優さんの「国家の罠 外務省のラスプーチンと呼ばれて」を読了
佐藤優さんの「国家の罠 外務省のラスプーチンと呼ばれて」を購入しました。佐藤さんは外務省で外交官として勤務していた人物ですが、2002年に鈴木宗男氏(北方領土問題)に関連する形で背任容疑で逮捕。512日間拘留されたのちに有罪判決を受けて失職しました。
|ω・`) なんだ、前科者か…
という感じですが、佐藤さん自身は、何もやましいことはしていない。北方四島返還に向けて必要なことだった。政治的意図で罪をかぶせる「国策捜査」の犠牲者だ。と主張しているわけですね。で、その主張と、逮捕から有罪判決を受けるまでの流れを書いたのが「国家の罠 外務省のラスプーチンと呼ばれて」になります。
北方領土に関しては、「北方領土は、日本固有の領土です」というCMが一昔前はバンバン流れていましたが、最近はさっぱりですね。第二次世界大戦後のソ連侵攻と、現在のロシアの不法滞在について、知っている若者は少ないんじゃないかなという印象。そのうち北方領土って何? とか言いだす時代が来るのかもしれませんね。
まぁ、自分にしても鈴木宗男氏が2002年に辻本清美さんとやり合った時には、北方領土問題というよりも、「あなたは疑惑の総合商社」とか「ムネオハウス」とか、ディーゼル発電ショボイなぐらいの印象しか残っていないのですが…。ワイドショーにまんまと乗せられたというか、作中にある「日本の識字率は5%だ」という言葉が胸に突き刺さります。
|゚Д゚)) さて、
「国家の罠」を読むと、外務省と鈴木宗男氏の当時の動き、日本とソ連がどのような駆け引きを行っていたのか、ソ連の組織の仕組みなどがわかり非常に興味深い。北方領土に関する外交がどのように進みどのように頓挫してきたのか、田中眞紀子さんと鈴木宗男氏の確執など、
|゚Д゚)) ほほぅ、ほほぅ
という感じで引き込まれます。ただ、全体的に面白いのですが、気になるのが後半部分。佐藤さんに対して不利な証言をした人間が、いかに自己保身に走ったかなど、検察の人の発言という形を取りながらこきおろします。また、佐藤さんを切り捨てた外務省に対する恨み節、自画礼讃と思える表現など、
|ω・`) 気持ちはわかるけど…
自分で言っちゃうのはどうかしらん? という部分が多くなってくるのは正直いかがなものでしょうか。まぁ、起訴されて有罪判決を受けた人物が自分が起訴された事件について書いた本なので、自分は正しいんだ、自分の側に立った人間はすべて素晴らしい人物なんだというスタンスなのは仕方ないんですけどね。第三者によるノンフィクションの形を取った方が良かったのかもしれません。
前半部分は☆4。後半部分は☆2。
なお、「国家の罠 外務省のラスプーチンと呼ばれて」は、「憂国のラスプーチン」というタイトルでマンガ化されています(現在も連載中)。マンガ版の方は、検察による取り調べ(書籍版でいうところの後半部分)から話が始まっていますが、今後北方領土問題をどう絡めてくるのか楽しみですね。国にはめられたという内容のうえ、鈴木宗男氏が年末に収監されたので連載が終わる可能性もありますが、とりあえず期待。
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