第2次世界大戦末期の独ソ戦の地獄模様を描いたノンフィクション「最強の狙撃手」を購入
ドイツ軍狙撃手ゼップ・アラーベルガー氏の戦争体験を綴ったノンフィクション「最強の狙撃手」を購入しました。第2次世界大戦末期(1943年7月~1945年5月)の独ソ戦がどのようなものであったのかを、最前線に配属された兵士の視点で捉えています。
|゚Д゚)) 俗にいう東部戦線というやつですな
ゼップ・アラーベルガー氏本人が執筆するのではなく、伝記作者であるアルブレヒト・ヴァッカー氏が、ゼップ氏との対談で得た話と歴史的事実をもとに話を構成しています。
|ω・`) 表紙はゼップ氏ではなく、なぜかロシア人の写真…
ハードカバーで約350ページ。無駄な改行がなく、ページ内に文字がぎっちりと詰まっていてかなりボリュームがありますね。
|∀・) それでは読んでみましょうか
ゼップ氏は家具職人。18歳の時に徴兵されドイツ国防軍に入隊します。最前線部隊の軽機関銃手として配属されるのですが、軽機関銃は強烈な威力を持つ一方で、その威力ゆえに敵から真っ先に標的にされるというポジション。
|ω・`) スカ引かされたってやつですか
経験の少ない新兵は消耗品という考えなのか、一番危険な場所に配属されます。最前線部隊の軽機関銃手であるかぎり自分を待っているのは死しかないと考えたゼップ氏は、負傷療養中に狙撃手への転向を決意し、上官に許可を求めます。使用武器はソ連軍から捕獲した狙撃銃モシン・ナガン91/30。
|゚Д゚)) なぜにロシアン製武器?
ドイツ軍では、狙撃兵=ひきょう者というイメージがあり、狙撃銃の開発も狙撃手の育成も行っていなかったんですね(一方のソ連軍は狙撃部隊を組織するなど育成に力を入れていた)。ただ、ソ連の狙撃手に対抗する手段がなく一方的にやられていたこと、上官が狙撃手の必要性を感じていたことなどからゼップ氏の要望が認められ狙撃手へ。
ゼップ氏は独自に狙撃手としてのノウハウを培っていくことになります。元々軽機関銃手はヤバイなど危険に対する嗅覚が鋭いというか、1発撃ったら狙撃ポイントからすぐに移動し位置を悟られないようにする、射撃の風圧で揺れる草から敵の潜伏ポイントを探し出すなど卓越したセンスを発揮。また、敵の司令官や狙撃手は即死させ、そうでない一般兵は胴体を撃って絶叫させることで敵全体の混乱と士気低下を図るなど、
|゚Д゚)) マシーンじゃないですか
天性の才能といいましょうか、狙撃手としてどんどんと実力をつけていきます。ただゼップ氏も最初からマシーンだったわけではなく、初めて敵兵を狙撃した際には罪悪感からおう吐するなどとっても人間的。が、戦場の過酷さがゼップ氏から人間的な感情を奪っていきます。
((((( ;゚Д゚))))) この戦場の描写がとんでもねぇの
敵の砲撃で塹壕の中に何か降って来たと思ったらそれが戦友の身体。頭は爆発片でズタズタになり手と足を失いながらも、「どうなったんだ、何が起こったんだ。なぜ急に暗くなったんだ、どうして身体の感覚が無くなったんだ。目が見えない、目が見えない」とのたうちまわりながら死を迎えたり、生きながらにして敵の戦車に足の方から踏まれて頭から血を噴出させながら死んだりと、
(|| ゚Д゚) トラウマー
な死にざまばかり。また東部戦線では捕虜と負傷者は虐殺されるのが常でしたので、それに対する恐怖とストレスも凄まじく人間的な感傷が介入する余地はなし。ちなみに書籍では、炸裂弾で狙撃されて頭が吹き飛んだ死体とか斧で撲殺された兵士とかゼップ氏の話を裏付ける写真も満載(ゼップ氏の部隊は記録用写真をまめに撮影していたようです)。
((((( ;゚Д゚)))))ガクガクブルブル
兵士がパニックになって逃亡しようとして上官に発砲したり、ロシア兵が新兵を殺して食べていたり、捕虜に対する残酷な仕打ち(出血多量で即死しないように手足を縛ってその先をのこぎりで切除)など、戦争全体の狂気というか異常性がこれでもかこれでもかというほどやってきます。
:(;゙゚'ω゚'): これが戦場か
これほど赤裸々に戦場を語ったものは珍しいんじゃないでしょうか。娼婦宿で楽しんだ兵士の尿道に注射器突っ込んで消毒液注入など、ちょっと笑えるエピソードもありますが、
('A`) うわぁ…
と精神的に叩きのめされます。ゼップ氏が戦闘に参加したのは2年間ですが、ドイツ軍の撤退時期と相まってとにかく壮絶。生きて帰れたのが奇跡としか言いようがないほどです。
評価は☆5。精神的にかなりきついのですが、独ソ戦を理解しやすいほか、戦争の恐ろしさと残酷さを知るためにも後世に伝えるべき書籍だと感じました。一生に一度は読むべき書籍かな。amazonや個人サイトで優れたレビューが載っているので、興味を持った人はそちらもどうぞ。
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