ノンフィクション「墜落遺体 御巣鷹山の日航機123便」を読了
飯塚訓さんのノンフィクション「墜落遺体 御巣鷹山の日航機123便」を購入しました。1985年8月12日に発生した日航機墜落事故に関しては多くの書籍が出ていますが、「墜落遺体」は被害者の検死(個人の特定と遺体の復元作業)、遺族への引き渡し、それに従事した警察官や医師、看護師の活動に焦点を当てています。
|ω・`) これはかなり珍しいですな
検死作業は、群馬県藤岡市にある市民体育館で行われましたが、報道関係者は完全にシャットアウト。中に入れたのは警察、医師、看護師、遺族のみで、そのためどのような活動が行われていたかということに関しては、ほとんど情報が出てこないんですね。
|ω・`) その情報がなぜ?
という疑問が生じますが、著者の飯塚さんは警察官(警察本部課長、警察署長、警察学校長などを歴任。1996年退官)。日航機墜落事故発生時は高崎署で刑事官として勤務しており、身元確認作業班の指揮をとりました。現場の責任者だからこそ書きえた本となっています。
|д゚) それでは内容を見てみましょうか
地元警察官が書いたということが影響しているのか、墜落現場周辺の地勢や藤岡市民体育館が選ばれた理由など説明がわかりやすいですね。また、事故発生の報を受けて出動命令が出て市民体育館を確保するまでの流れや、遺体の到着を待ちうける身元確認作業班の心境なども脚色された感じがなく、当時の雰囲気がよく伝わってきます。
|д゚) どことなく穏やかな感じですな
と読んでいたのですが、遺体が到着したあたりから様相が急変します。現場から届けられた毛布を開くと出てきたのは遺体ではなく塊。「なんだこれは?」と広げていくと、頭髪、胸部の皮膚、耳、鼻が出てきてそれが1人の人間だとわかったり、頭に他人の頭がめり込んでいたりと、
:(;゙゚'ω゚'): 一体何がどうなってるのか
という描写のオンパレード。520人の乗客に対して、検死体として運ばれてきたのが2065体。四散していたり結合していたりで生前の姿をとどめていないんですね。墜落の瞬間にかかった衝撃がいかに凄まじいものであったかが、遺体の状況を通じてわかります。読んでいて愕然としました。
骨肉片や巻きついている遺留品から個人を特定し復元する作業、それに従事する医師や看護師、警察官の奮闘、遺族の嘆き悲しみなど、
|゚Д゚)) 読んでいて何度も卒倒しそうになりました
飯塚さんは感情的にならずに第三者的な目で記述しているのですが、精神的にかなりきついです。ただ、日航機墜落事故で、遺族や関係者がどういったことを現実として受け止めなければならなかったのかを知る事のできる数少ない書籍だと感じました。
評価は☆5。事故や遺体を扇情的に扱うのではなく、当事者としてそして一人の人間として事故や遺体に向き合っている点にも好感が持てました。日航機墜落事故に関心のある人にはぜひ手に取って欲しいですね。
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