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2010年8月28日 (土)

考古学か盗掘か、「インカに眠る氷の少女」を読了

考古学者のヨハン・ラインハルト氏によるノンフィクション「インカに眠る氷の少女」を読みました。

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標高6000メートルのアンデスの山頂には、500年前に生贄として山(神々)にささげられたインカ族の少女たちのミイラがいくつもあるそうで、その発掘に関するお話です。

エジプトのミイラは、防腐処理のために内臓や脳みそなどが取り除かれているのですが、インカ族のミイラはそのような処理はされず、脳も内臓もそのまま。標高6000メートルのため微生物による侵食も少なく、さらに凍結保存されているという具合で、考古学者にとっては、

|゚Д゚)) グッドコンディション!

学術的な価値が非常に高いんだそうです。DNAやRNA、食生活などの調査に最適だとか。

研究のためとはいえ、命を犠牲にして捧げられたものを勝手に持ち去るのはどうかと思うのですが、考古学者が発掘しなくても、副葬品目当てに盗掘者が荒らしにくる(しかもミイラをダイナマイトで吹っ飛ばす)ので、それなら確保しようということで発見と発掘に取り組んでいるんだそうです。

|ω・`) インカの遺物は闇市場で大人気らしいです

さて、インカにおけるミイラの発掘と保存については、政府主導だとかそういった組織だった活動はないとのこと(意外ですが、政府が極貧でそんな余裕もないとか)。考古学者が個人で現地ガイドを雇って調査を行い、ミイラを見つけて保全・調査が必要と感じたら、政府や大学、研究機関などにミイラの発見を報告し資金援助を呼びかけるそうです。

|゚Д゚)) スポンサー探しってやつですな

で、このスポンサーになる機関が非常に厄介。政府の担当者に「どこどこでミイラを発見した~」と言おうもんなら、政府担当者はその情報をマスコミにリーク(金を握らされるとベラベラしゃべるらしい)。マスコミが発表し、それを見た盗掘者が大量にその地点にやって来て荒らすとか。大学や研究機関に援助を求めても、利権を求めて奪い合いになったり(組織間の反目が凄く、妨害行為とかも出るらしい)、

|ω・`) なんということでしょう

という感じ。さらに、発掘品の保全管理もずさんで、過去に遺物が破壊されたり大量に紛失したりといったことがあり、油断できないんだとか。

( ゚ω゚ ) 金も出すけど口も出す、そして無責任よホホホ

「インカに眠る氷の少女」では、考古学の意外な一面というか、裏側のドロドロが描かれているので読んでいて退屈しないですね。カラーで掲載されているミイラの画像が生々しくてショッキング(死者の画像そのもの)なのですが、考古学に興味がある人にはおススメ。

評価は☆4。

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