星新一「人民は弱し 官吏は強し」を読みました
星新一さんの「人民は弱し 官吏は強し」を読みました。星新一さんの父親である星一さんについて書いた伝記ですね。
|゚Д゚)) それでは読みましょうか
星一さんは、12年間にわたって米国へ留学。明治の頃に海外留学ということでかなり先進的な人物といえるでしょう。そして、帰国後に製薬会社を興します。青年実業家というわけですね。
それまで薬といえば輸入物に頼っていたわけですが、
|∀・) これからは国産化ですよ
ということで湿布薬やモルヒネの開発に着手。日本企業として初めてモルヒネの精製に成功します。原価計算や、原料となる阿片が当時各国でどのように取り扱われていたのかなど、
|゚Д゚)) 読んでいて非常に興味深い
海外諸国や政府との折衝、販路の構築などビジネス小説としても読ませる内容です。執筆者の星新一さんの力量だと思いますが、難しくなりがちな話がすんなりと頭に入ってきて読みやすいです。
|ω・`) さて、
星一さんは見聞も広く発想も豊かなんですが、相手に直言するという性格をお持ち。海外での生活が長かったせいか、行政に対してもズバズバと意見を言います。理路整然としていて正しいことを言っているのですが、当時の行政は、
(#゚Д゚) 役人は偉いんじゃゴルァ!!
という意識が強く、相手の意見が正しくても素直に受け入れられない。言い負かされたという屈辱感というか、感情のしこりだけが残り、「星一は気に食わん」という結果に。
(゚Д゚)ウゼェェェ
行政による星一さんの製薬会社に対する嫌がらせがスタート。また、競合する製薬会社も行政や政治家に裏金を渡し妨害工作を開始。自らは努力をしないくせに、他人の足を引っ張ることに必死という陰湿さ丸出し。
ヒィー(((゚Д゚)))ガタガタ
星一さんは、そんな妨害行為を恨みに思うことなく、国や製薬業界発展のためへの取り組みや提言を行うのですが、感情論で動く相手はことごとく反発(後ろめたさも手伝ってさらにエスカレート)。阿片輸入の妨害、不当な取り調べや起訴(国の指示でやったことで裁判になる…)、そして最終的には、新聞社に手を回し、星一逮捕など事実無根(当の本人は出張中)の情報を数度にわたって流布。マイナスのイメージを世間に広めることに躍起となります。
( ゚ω゚ ) ………
原料の輸入は止められるわ、確立した精製法は横取りされるわ、構築した販売網もズタズタにされるわ、風評被害を受けるわで、社会的抹殺というやつですね。
星新一さんはその様子を冷静につづっているわけですが、読んでいるこちらは、
( ゚皿゚) キーッ
こんな不条理なことが許されていいのかと血涙の流れる思い。現代社会でも不条理な事は多いのですが、明治、大正、昭和初期の頃の日本社会は今よりも閉鎖的で、その不条理さは現代の比ではないですね。
( ゚皿゚) 建設的な考えは皆無
会社の経営が行き詰まったところで、星一さんにさらなる魔の手が伸びます。その後の詳細に関しては本書では触れられていませんが、事業を引き継いだ星新一さんの暗黒時代到来を予感させます。
社会の発展云々ではなく金で動く政治家。判断材料は、いかに自分の懐が潤うかだけ。そりゃ国も良くならんわなぁ。色々と感じさせる内容でした。社会人経験のある人にお勧め。評価は☆5。
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