梁石日(ヤン・ソギル)さんの「闇の子供たち」を読みました
梁石日(ヤン・ソギル)さんの小説「闇の子供たち」を読みました。タイにおける幼児売春、幼児売買について取り上げた小説です。日本でも、生活の厳しさから子供を人買いに売るといった話があり、そういった話は
|ω・`) チラッと耳にしたことがあるわけですが
タイの方が過酷。「闇の子供たち」では、8歳ぐらいの子供(男女問わず)が3万円ぐらいで売られ、すぐに売春宿で仕事をさせられることになります。
子供たちに対する恐怖の植え付け、そういった子供を相手に性欲を満たす外国人(男女問わず)などの描写もきついのですが、そういった幼児売買に政府、警察、軍、マフィアが絡み、どうしても覆すことができない状況に陥っているのが読んでいて
('A`) 精神的にきつい
まったくもって救いがないわけです。テーマとしては、力のある者、経済力のある者による徹底的な搾取といったところでしょうか。これは、タイ人同士だけでなく、タイ人に対する外国人の搾取、貧困国に対する発展国の搾取というものも含まれています。
さて、小説では、8歳で売られ、性の奴隷としてこき使われ、エイズなどの病気になるとゴミ捨て場に捨てられる子供たちを保護しようといういうボランティア団体が登場します。
このボランティア団体は、日本人女性も含まれていて、その先輩として日本人新聞記者も登場。幼児売春だけでなく、幼児売買(移植用臓器提供)の防止に向けて動き出します。悪のシンジケートの存在を明るみに出して、国際世論に訴えるというもので
( ゚д゚)σ探偵ものっぽくなるんか?
と思っていたら、そういう趣旨で登場させたのではないんですね。ボランティアで活動してきた女性の言動、新聞記者の言動を通じて、このタイにおける幼児売買というものに対する他国人の認識というか、考えといったものを痛烈に批判しています。ラストを読んだ時の衝撃は
y=ー(´・ω・)カチャ…y=ー(´゚ω゚)・∵.ターン
↑頭を撃ち抜かれた
といった感じでした。小説「闇の子供たち」、映画『闇の子供たち』に触れた人は、きっと、「タイの子供たちは可哀そうだな」と涙を流して同情するでしょう。しかし、作者は、そのことを見越した上で、「現地のタイでその状況に長く接した人でなければ、一時的には同情しても、所詮他国のこととして忘れるだろう」と痛烈に皮肉っていると受け止めました。また、「他国を搾取して経済的に成長した日本。搾取されたことのないお前たちに搾取される側の何がわかる?」という、在日韓国人としての梁石日さんのメッセージが感じられました。
フィクションか、ノンフィクションかは、人によって意見があるかと思いますが、久々に「考えさせられる小説に出会った」という感じです。映画がこの本のテーマを、ちゃんと表現できているかどうかはわかりませんが、おそらく難しいでしょう。映画だけでは、単に「タイの子供たちは可哀そう」で終わってしまうかもしれません。
ぜひ、小説を読んでさまざまなことを感じ取ってほしいですね。また、巻末にある解説も必読です。
評価は☆5。きつい描写がありますが、その分を差し引いても一読の価値ありです。
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