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2008年10月27日 (月)

吉村昭さんの小説「死顔」を読む

吉村昭さんの小説「死顔」を読みました。吉村昭さんの作品としては、最後の作品になるんでしょうか。平成18年11月に発行されたもので、短編集になります。収録作品は、

ひとすじの煙
二人
山茶花
クレイスロック号遭難
死顔

このうち、「ひとすじの煙」、「二人」、「死顔」は、吉村昭さん自身の体験。私小説で近親者の死について語られています。「クレイスロック号遭難」は歴史小説で完成前の原稿、「山茶花」は受刑者を軸にしたフィクションです。

( ・ω・) ノンフィクションとフィクションが混在

近親者のエピソードに関しては、過去の作品でも触れられているものですね。

フィクション小説の「星への旅」に始まり、ノンフィクションの戦争ものなど、吉村昭さんの小説は作中で死に触れることが多いのですが、これは著者が学生時代に経験した壮絶な闘病生活が影響しているだけでなく、人間や歴史といったものをテーマに据えた場合、死というものが自然現象として関わってくるからだと思います。

ほかの作家の作品ですと、死を美化する、恐怖の対象とする、無視するのいずれかとなるのがほとんど。死=特別な要素といったところですが、吉村昭さんの作品では、死=誰の上にも訪れるもので、特別に飾り立てるようなことはしません。全生物に訪れる自然の営みのひとつとして捉えています。これは、ノンフィクション作家として、多くの人、記録に触れてきた吉村さんならではの到達地と言えるのではないでしょうか。

さて、「死顔」ですが、そういった吉村昭さんの考えを象徴するかのように、近親者の死をテーマにした作品を含みながらも、どこか淡々とした印象となっています。

( ・ω・ ) というわけで

面白い作品(ドラマチックであったり涙が止まらないなど)というわけではないですが、近しい人を亡くしたなど失意の底にある人が読むと、心が落ち着くと思います。死=自然という考えを必要とする人、そういった考えが必要なシーンでオススメな一冊ですね。

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