雫井脩介さんの「犯人に告ぐ」を読了、巻島を取り巻く人間ドラマが秀逸
雫井脩介さんの「犯人に告ぐ」を購入しました。連続幼児殺人犯を追う警察官を主役にした警察小説(←推理小説ではない)ですね。
警察小説は、大体次のタイプに分かれます
1.犯人の正体が初期の段階で読者に明らかにされるタイプ
2.複数の容疑者が読者に提供されるタイプ
3.犯人名は伏せながらも、犯人が犯罪を犯す描写(犯人視点)があるタイプ
4.容疑者リストも犯罪を犯す描写も無いタイプ
1はトリックを楽しむ、2は推理を楽しむ、3は暴力描写など代謝として楽しむ、4は先の読めない展開を楽しむと異なるわけです。
「犯人に告ぐ」は、この4番目のタイプですね。一警察官(巻島)の視点で話が進み、読者が得られるものは巻島が得るものと同じ情報。犯人の年齢、性別、殺害方法、目的などは全て伏せられているわけです。
段階的に事件の全容が明らかになっていくので、一旦読み始めたら、
|д゚) 先が気になってしょうがない
というわけで、歩行中、食事中、通勤中にフムフムと読みふけりました。
主役となる巻島は、超人的な能力や推理力、腕力などが特にあるわけではなく、現実的な人物として描かれます。読んでいて嘘臭さもなく、どっちらけ感もない。著者の力量によると思いますが、非常に一個人というか人間なわけですね。そこも読んでいて好感。
裏表紙を見ると、テレビを通して犯人に呼びかけるという「劇場捜査型」が注目というようなことが書かれていますが、そういったプロットではなく、面子を重視する上層部の思惑、視聴率競争に明け暮れるTV業界、情報をリークする内部、被害者家族、捜査にあたる警官と、巻島を取り巻く人間ドラマが秀逸ですね。
( ゚Д゚)σ 犯人逮捕以外にも問題山積み
そして徐々に浮かび上がる犯人像。犯人の居住エリアの特定とジワジワと包囲網が狭まり、遂にクライマックス。
( ゚Д゚) スゲェ、スゲェよコレ
久々に小説に没頭しました。連続幼児殺害という重いテーマながらも、その殺害に至る描写などはないので、そういった描写が嫌いな人でも安心して読めるでしょう。
評価は、☆5。
ω_(゚∀゚ )≡ モヒョヒョヒョヒョ
一食抜いても読む価値ありです。しかし、映画化したら説明不足になるんじゃないかなぁ…。
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